考えることが重要だと言われて久しくなりました。私が中学受験をした約40年前には聞いた記憶がありません。それがバブル期を経てゆとり学習導入の流れの中でどんどん唱えられるようになった気がするので、もう30年近くになるんじゃないでしょうか。
その反面、今日に至るまでどんどん覚える内容が削減されています。ちょっと前に歴史教科書から武田信玄や坂本竜馬がいなくなるという話もありました。
この暗記から思考へ、という動き自体は間違ってないと思います。しかしながら、学校でそれがうまく運用されているかというと疑問です。何十年も経つというのに、昔と比べて暗記する内容が減っただけ、という気がしてます。思考を育てるノウハウを学校側が持っているとは言えません。
それにも関わらず、中学から大学まで受験業界では思考へのシフトが進みました。学校でやってくれない以上、各家庭で「考えること」についての対策を練らないといけません。それをやっているかどうかで、いつの間にか差がついているのでしょう。
そこで今回は、私の「考えること」に対する考えを示した上で、我が家で実践してきた思考対策について紹介いたします。
思考の定義
「考える」は辞書にこう載っています。
① 物事について,論理的に筋道を追って答えを出そうとする。思考する。
② さまざまなことを材料として結論・判断・評価などを導き出そうとする。
③ (形容詞・形容動詞の連用形に付いて)それが…である,という感情や評価をもつ。…だと感ずる。
④ 結論を出すための材料の一つとみなす。
⑤ 計画する。意図する。
⑥ 工夫して新しいものを作る。
⑦ 罪を問いただす。処罰する。
⑧ 比較検討や占いの結果に基づいて判断する。
引用 - スーパー大辞林
勉強に関しては1と2が当てはまります。そして思考の方法は㈰でハッキリと論理的思考だと書かれています。
ロジカルとラテラル
思考方法には垂直的なラジカル(論理的思考)と水平的なラテラル(平行的思考)に大別されます。簡単に言うと、積み重ねていくラジカルに対し、ラテラルは違う視点から見て考えるというイメージです。
ビジネスの世界では、集団で意見を持ち寄って化学反応を起こすことを意図したブレインストーミングという手法がありますが、ラテラルシンキングの応用と言えます。
これは、異なる生き方をしてきて違った価値観を持つ他人同士だからこそやりやすい方法です。1人でやろうとすると、よほど頭が柔軟か豊富な知識が必要となるでしょう。つまり子供にラテラルシンキングは難易度が高いのです。
別の視点や他のアプローチもあるかも、と意識させることは大事ですし、人生経験の少ない小学生でも、時には効果を発揮するでしょう。しかし個人差が有り過ぎます。教え方もよくわかりません。最初から使いこなせるのは天才で、その真似はすべきではありません。ですから、ラテラルシンキングについては留意するにとどめ、日頃鍛えるのはロジカルな思考だけで構わないというのが私の結論です。ただし、ラテラルを意識だけはする習慣をつけた方が良いです。中学、高校と年齢が上がるごとに活きてくるはずですから。
論理的思考の鍛え方
論理とは何かを知る
ロジカルシンキングには知識はあまり必要ありません。そのため、小さい頃からこつこつと身につけていくことができます。
論理力は算数の問題を解き、筋道だった作文を書けるようになる段階で、次第に身についていくだろうと思っていたところに、ちょうど気になる本を見つけました。「子どものための論理トレーニングプリント」です。
バカバカしいくらいの簡単なところから入りますが、適度にレベルが上がっていき、自然と論理が体系的に身につく良書です。国語視点の論理を学ぶ機会は少なかったので、とても役に立ちました。できれば低学年のうちに終わらせておきたいです。発売後十数年経つ現在でも売られています。目を付けた本がずっと売れ続けるのはうれしいものです。
前の記事で紹介した論理系パズルももちろん役に立ちます。そういうものをやることにより、早い段階で論理とは何かをつかんでおくと良いでしょう。
俯瞰する
ロジカルシンキングは垂直的な思考方法です。一段一段積み重ねて高い所に登る、または深く深く潜り込んでいくイメージです。
問題が与えられ、いくつかの条件を読み取った後、その条件を個別に処理していくのが普通の方法です。ところが、そのうちのひとつを解決したときに、元の問題は何だったっけ?ということになって、改めて問題を読み直さないといけなくなることもしばしば。
これは頭の中の作業スペースが狭いことが原因です。作業スペースが広ければ、問題の読み返しは少なくてすむばかりでなく、いくつかの条件を並行的に眺められます。すると全体を俯瞰できるようになってきます。この「俯瞰」が非常に強力な作用を持つのです。
まず問題を見誤ることが減ります。そして何よりも、全体をとらえられるだけで自然と答えに見えてくることが多くなります。解答する方針が立てやすいとも言えます。9割の問題はそれだけで解けるような印象です。
また、全体を見渡す余裕があるので、新しい発想する機会が増えることが期待できます。ラテラルな発想はこんな素地から生まれやすいのだと思います。
この作業スペースの広さをワーキングメモリといいます。パソコンのメモリと同じで、容量が大きいほど作業スペースは広くなり、俯瞰することが可能となります。
以上のことから、ワーキングメモリの容量を大きくすることが思考力をつけ、ひいては地頭を良くする一番の方法だと私は考えています。
小学校の時に算数が苦手だった私が、大人になって算数ができるようになっていた大きな要因は、この俯瞰する目をもつことができるようになったことなのでしょう。
頭の中で再現する
ではいよいよ、どうやってワーキングメモリの拡張を行ってきたかに移ります。メモリというくらいですから記憶力を鍛えることで大きくなるはずです。それに加えて、頭の中でいろいろと再現したり動かしたりすることが大変効果があったと感じています。
片付け場所を決める
もう少し具体的に見ていきましょう。記憶力を鍛えるだという話ですが、そのためにまずは覚えなければいけません。そしてそれ以上に大事なことは、その覚えたものをいかにして引き出すかということです。
引き出すためには、覚えたいものはできるだけ映像化しやすい形で覚えるのが良い方法です。都道府県を一生忘れないのは、日本地図といっしょに覚えているからです。〜県の場所はココ!と決まっているから、セットになっていて忘れにくいのです。(実際はそれに加えて日頃から天気予報等で繰り返し見ていることが大きいですけど・・)
物事はしまう場所があれば忘れにくくなります。だからしまう場所を作ってやれば良いのです。覚えたいことを書き出して番号を振り(ナンバリング)それをしかるべき片付け場所にしまっていきます。
日本地図なら47の片付け場所ができるので、私はそこに地図記号を47個関連づけて収納しています。他にも元素周期表、世界地図などに、百人一首、歴代総理大臣などを収納しています。片付け場所があれば引き出すのは少し楽になりますし、頭の中で再現するのも容易になります。
この方法は記憶力選手権のテレビ番組を見て思いつきました。与えられたランダムな情報を、選手独自に設定した順番通りに関連づけて覚えていきます。自宅の家具だったり、いつもの散歩道だったり、そういうものをナンバリングして何種類ものルートを持っているのです。ジャーニー法と言う名前がついています。ジャーニー法は勉強にも使えると思い、真似してみたというわけです。
1枚の紙に収める
ジャーニー法の場合もそうですが、覚えたいものは1枚の紙にまとめると、頭の中で再現するのに適しています。どの辺にどの情報があったかなどを視覚的に思い出すことができるからです。マインドマップ、フィッシュボーン、などの一枚にまとめるのに向いている方法も使いました。
頭の中で動かす
再現するだけでなく頭の中で数字や図形などを動かすこともワーキングメモリを大きくすると考えています。
その方法には、漢字を書かずに覚えること、暗算をすること、算数を何も書かず、頭の中だけで答えを出すこと、などがあります。こちらはさほど工夫があるものではないですが、なかなか疲れるので頭を使っているという実感が湧きます。
まとめ
思考はほとんどの場合論理的思考(ロジカルシンキング)を指します。将来に向けて、水平的思考(ラテレルシンキング)も意識だけはする癖をつけておくと良いでしょう。
論理的思考はできるだけ早くから基本を身につけておくのが良いでしょう。
論理的思考を展開するときに、ワーキングメモリという短期記憶能力があると、全体像を俯瞰することができて思考を助けてくれます。
ワーキングメモリの容量を増やすには、頭の中でいろいろと再現したり動かしたりすることです。
そのための方法はたくさんありますが、今後すこしずつ紹介していく予定です。乞うご期待!
今回の記事はまだ実例をともなったものではないので、ちょっとわかりにくかったと思います。しかしこの先、具体的な方法を紹介する記事を読んでくださるときには、もう少し楽にご理解していただけるはずです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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