算数の先取り学習をどんどん進め、とりあえず小学校で習う基礎的なところは、小3終了時点でほぼ網羅したと思います。難しい問題が載っていない薄い問題集ならば、小6のものまで済ませていました。
分数小数を含む割合、平均、速さ、角度、面積、体積、倍数約数をとりあえず理解しているというレベルです。
ひとまず先取りが終了したので、いよいよ中学受験用の算数に取りかかることになります。塾に通うと、先取りと並行しながらいわゆる特殊算などをやっていくのでしょうが、こちらはカリキュラム等もよくわからない素人なので、先取りを済ませてからの方が間違いがないだろうという判断でした。
そこで今回は中学受験算数の基礎をどのように進めたかについて話を進めていきます。使用した教材は学研の応用自在です。当時はこれをマスターしたらとりあえず中学受験ができるという評判だったからです。もっとも、解説はほとんど利用せず問題と答えだけの利用でした。
インデックス
文章題を教える上で気をつけたこと
特殊算を教えない
文章題を教える上で気をつけたこと
特殊算を教えない
中学受験算数の基礎というと、つるかめ算や植木算といった特殊算が思い浮かびます。しかしブログ内で再三申し上げていますが、私は特殊算を分類して個別には教えていません。理由は、特殊算といってもそのそれぞれにおいて、そこまで特殊なやり方があるわけではないからです。小学校で習うもの以上の難しい概念があるわけではなく、解き方の工夫に名前が付いているに過ぎません。
その工夫を見つけることはたいへん勉強になります。ところが特殊算として解き方を教わると問題を見たときに、最初にこれは何算だろうと考えてしまう可能性が高くなってしまうのです。ただそれが必ずしも悪いとは言えません。そんなところでいちいち考えるのは時間の無駄。そんな基本はさっさとインプットしてしまった方が効率的という考えがあるのもわかります。
でも効率ということであれば、じっくり取り組んで答えに至った方が考え方の定着率も高くなるので、一概に非効率とは言えません。急がば回れとも言います。そもそも考える時間を確保したくて塾に行かせてないのですから、私が考えさせる方針を採るのも当然とです。
ただし、特殊算は教えないといった舌の根も乾かぬうちに申し訳ないですが、つるかめ算だけは教えました。理由は、特殊算の代表的存在ということもあって、特殊算を分類しない方針が決まるかなり前にクイズ的に教えていたことです。
つるかめ算は、極端な場合(全てがカメとする)を考える方法と、少ない単位を調べてそれを全体に発展させる(1匹入れ替えると足は何本減る?)方法の2つが入っているところが特長です。特に前者はつるかめ算特有の頻出する考え方なので、名前を付けておくことは役に立ちました。だからつるかめ算だけは教えても良いと思います。
目指すは問題の100%理解
何より一番大切なことは問題をよく読むことです。それこそ100%意味が理解できるまで繰り返し繰り返し読みます。100%の理解とは理想的には最初から全体像を把握できるくらいにするということです。そうなれば俯瞰力で、あとは順番をつけて片づけるだけ。答えは出ているも同然です。
いきなりそこまでいかないときは、問題の一部分から新しい条件をひねり出してくることを試みます。そうしながら徐々に全体像に近づいていくようにします。
これだけではよくわからないと思うので例題を挙げます。
相手が目の前にいれば反応を見ながら声かけをして進めていきますが、ここでは一方通行です。でも多少なりとも雰囲気を出すために少しずつ読み解いていきますから、わかったところで答えまで出してください。(先を見たくない人はゆっくりスクロールしてください。)
例題1
「カードゲームの参加者に12枚ずつコインを配るとちょうど足りました。ところがそこに新たに3人加わったため、最初からの参加者全員からコインを2枚ずつ集めてその3人に配ると、全員の枚数がそろいました。コインは全部で何枚でしたか。」
まずは状況を理解できたでしょうか。最初からの参加者の人数は書かれていないことがわかります。あるポイントに気付いた人は秒殺できたかもしれません。
ポイントは最初からの参加者全員から2枚ずつ集めたところです。そこから、加わった3人を含めた最終的な参加者ひとり当たりの枚数がわかります。
最初12枚だったのが2枚減ったので、10枚です。新しく加わった人も10枚。元からいた人も10枚です。
ここで問題を詳しく読み解くと、
「カードゲームの参加者に12枚ずつコインを配るとちょうど足りました。ところがそこに新たに3人加わったため、最初からの参加者全員からコインを2枚ずつ集めてその3人に配ると、全員の枚数が10枚でそろいました。コインは全部で何枚でしたか。」
ということは、新しく加わった3人が持っている枚数がわかります。
30枚です。この30枚がどうやってできたかを考えると、元からいた参加者の人数がわかります。
1人2枚ずつ集めて30枚になったので、元からいた参加者の人数は、
30÷2=15(人)
ここに3人加わったので、全部で18人です。
最後に求められているものを確認するとコインの総数ですから、1人10枚が18人で180枚ということになります。
こんな感じで問題を理解し、読み解きながら条件を増やしていきます。これが基本です。
条件を読み換える
問題を読み解くところからもう一歩踏み込んで条件の読み換えをします。わかりやすい条件に変更してしまうんです。ただし、読み換えをするとそれにあわせて条件を変えないといけません。これも例題を挙げます。
例題2
「ある本を読むのに、1日目は全体の半分を、2日目は残りの半分よりも10ページ少なく読んだら、残りは50ページでした。何ページある本だったでしょうか。」
1日目半分読んだのはいいんですが、2日目が問題です。ここを読み替えていきます。楽になるように読んでもらいたいところです。
計算が面倒だからあと10ページ読んどけよ、ということで2日目は残りの半分読んでもらいます。そうすると2日目の残りページが変わってきます。
2日目に10ページよけいに読んだから、残りは10ページ減って40ページに変更しないといけません。この条件変更を行っても、本全体のページ数に変更はないことを確認してください。
ここで問題を読み換えます。
「ある本を読むのに、1日目は全体の半分を、2日目は残りの半分を読んだら、残りは40ページでした。何ページある本だったでしょうか。」
これならあとは簡単ですね。
半分の半分が40ページなので、本全体は4倍の160ページです。
要点は、楽な条件に換えて成立しないかどうかを考えることです。結構上手くいくことが多いので、考える価値大ありです。
線分図、面積図はあまり使わない
線分図、面積図は、中学受験といえばコレ!というくらいおなじみの考え方です。どちらも私が小学生の時からある伝統的な手法です。
線分図の方は、年令や複数名のテストの点数など単純なものを比べる場合には自然と浮かびますが、それ以外で使うことはあまりありません。面積図に至っては、ほぼ全く使いません。イメージするのに不自然なんです。
算数の良さは現実にあり得る具体例が描けることです。それが可能なのに、面倒な線分図や面積図全般は非現実的ですし、小手先の技術という気がしてあまり好きではありません。
ここでひとつ面積図を使って解ける例題を挙げます。その例題は前問でやった問題を読み替えるやり方でも線分図でも解けるので、それらを比べてみたいと思います。
例題3
「園児1人1人にあめ玉を配ります。1人3個ずつ配ると8個余りました。そこで1人4個ずつにすると今度は4個足りません。あめ玉は何個ありますか。」
面積図を書いてみます。
赤の四角はあめ玉の数、園児は□人です。
式にすると、
(4ー3)×□=8+4
□=12(人)
あめ玉の数は、
3×12+8=44(個)
検算→4×12−4=44(個)
次に読み換える方法です。
4個足りなくなった時点で普通どうしますか。あるならもう4個持ってきてもらって、1人4個にするはずです。そこでこう読み換えます。
「園児1人1人にあめ玉を配ります。1人3個ずつ配ると12個余りました。そこで1人4個ずつにするとちょうど足りました。あめ玉は何個ありますか。」
4個増えても園児の数は変わりません。12個から1人1個ずつ配ってちょうどになるのだから、人数は12人です。あとのやり方は同じで、44個になりました。
線分図はこうなります。
赤の四角はあめ玉の数、園児は□人です。
□が12とわかります。あとは同じです。
やはりちょっと技術に走っている感じがして好きではありません。でも好き嫌いはともかく最終的に解ければ良いのだから、慣れている人は使えばいいでしょう。でもこれから覚えるくらいなら、具体例をイメージしやすい方法の方がこの先難問を解く上では有効だと思います。
息子は結局線分図も面積図も使いませんでした。知らなくても特別困ったことはないそうです。
まず小さい範囲で考え、全体に発展させる
いきなり全体像をイメージすることが困難なとき、最初に小さい部分を具体的に考え、それを全体に波及させるのがとても有用な文章題の手筋です。これは場合の数や規則性といった数の分野でも使える必修手筋といえるでしょう。例題を挙げます。
例題4
「100mの直線道路に2mごとに花を植えます。道路の両端にも植えるとすると、花は何本必要ですか。」
100mだとちょっと大変ですが、10mくらいなら図を書いて数えられます。まずはその短い範囲で基本的な考え方を理解します。
10mの道路の中に2mの道路はいくつ入りますか。
10÷2=5(本)入ります。この2m道路のひとつひとつに花を植えます。そうすれば2mごとに植えることができます。植える場所は一番後ろとすることにします。
これを5つつなげるとこうなる。(10m道路)
見ての通り、先頭に植えられていません。両端に植えるという条件ですから、必要な花は1本足した6本ということになります。
100mになっても考え方は同じで、100mの中に2m道路は50本入ります。必要な花50本に1本足した51本です。
小さい法則をつかんで全体に応用する、このタイプの問題は多いので、考える上での道具としてマスターしておきたいところです。
頭の中だけでやる練習をする
簡単な問題を紙と鉛筆を使わずに解く練習もよくやりました。頭の中で物事を動かしたり、頭の中に取っておく練習をすることはワーキングメモリを大きくすることにつながり、ひいては思考力を伸ばすことにもつながります。
頭の中だけで解くには、問題に対する理解度が高くないと難しいので、中身を理解しているかどうかのリトマス試験紙としての役割も果たしてくれます。復習→定着という作業と地頭力増強がいっしょにできて一石二鳥でした。
計算も含めて全部頭の中だけやれれば理想的ですが、時間がかかってしまい過ぎるのも事実です。複雑な計算はメモしておいてもいいと思います。
今回はここで取り上げましたが、この方法は算数先取りをしている頃から始めていました。小1、2年からやって慣れておくことをお勧めします。その際は簡単な問題集が良いでしょう。
時間は気にしない
制限時間は設けずに考えさせました。場合によっては何日か考えさせることもあります。自分で考えついたものはなかなか忘れないので、必ずしも時間をかけることが無駄になるとは限らないということは先にも書いた通りです。
最初は何を考えていいのかわからないかもしれません。まずは問題を完全に理解することです。何を求められているのかがわからないことには始まりません。その上で問題文から何か条件を読みとれないか、さらに読み換えはできないかを考えます。これは実際に何問か考え、解説していくうちにコツをつかめるでしょう。
文章題以外
整数、場合の数、規則性等を扱う数の分野は、文章題とほぼ同じ扱いでやらせました。特殊算という分け方をしなかったように、数の分野自体も文章題と区別することはしませんでした。
図形はちょっと扱いが違っていて、数日に渡って考えさせるようなことはせず、その分数多くこなして慣れることを重視しました。図形は私の趣味の詰将棋に似ているところがあって、手筋が見えるかどうかが大事になってくるので、どうにも見えないものは仕方ありません。だた現実には案外自力で解けることが多かったと思います。使っている問題集がそんなに難しくないのも良かったのかもしれません。
終わったのはいつか
早め早めを心掛けたのですが、分量もそれなりだったので4年生の間をかけてほぼ終わらせられたと思います。はっきり記録がないのですが、5年生からは主戦場が雑誌「中学への算数」の日々の演習に移っていったので、4年生で終わらせたと推察します。
その時点で算数に関しては、日能研R4偏差値50台半ばくらいの学校の問題はできる感じでした。これを60〜70に引き上げていくのが5年生以降の課題になります。
いかがでしたか。ほぼ毎日続けましたからそれなりの成果も表れ、思った通りに進められました。かけた時間は、長期休みも含めて均せば1日1時間くらいでしょうか。そのうち付いて教える時間はその半分の30分くらいだったと思います。
ここまでは特に大変なところもありません。我が家では指針がなかったので早めに動いて小4終了時で受験算数基礎がひとまず終了しました。その経験から申し上げると、R4偏差値60以内の中学狙いならば、小5終了時。受験はしないけれども高校はトップ校狙いならばやはり小5終了時までにここまでこなしておけば、小6でじっくりと思考問題に取り組むことができます。受験しないのに中学受験の問題をやることには抵抗があるかもしれませんが、やるとやらないとでは中学での楽さが雲泥の差です。小学校の算数だけでは物足りないので、是非ともその範囲を超えた算数をやっておいてもらいたいと思います。
コメントをお書きください