今回は社会の勉強法をご紹介します。中学受験の社会は地理、歴史、公民の3分野から成ります。どれも基本的なやり方は同じですので、その中から歴史に絞っていくことにします。
インデックス
歴史の到達目標
ベースの本を設定する
教科書などの文章で書かれた通史の本がスラスラ読めること。これが歴史の到達目標のひとつです。流れをつかみながら知識も抑えるには通史を文章で読むのが一番です。無駄なく漏れなく歴史を網羅できるので、効率の面から考えても基礎に据えるには最適でしょう。読みながら、わからないことが何一つなく完全に理解できるようになればその本についてはひとまずマスターしたということになり、ひとつの到達目標を果たしたことになります。
私が当時選んだのはこの「小学生のための考える社会科」です。でもこれは今では使えないですね。特に地理の方は。歴史は実際のところ、十分に使用に耐えるとは思いますが、やはり古いものを使うのはいい気持ちのするものではありません。現在まで版を重ねていれば良かったのですが…。
かと言って、学校の教科書では心もとないと思います。もっとも最近の小学校の教科書を実際に手に取っていないので無責任なことは言えませんが。レベル的には中学の教科書を使うのが良いと思いますが、これもまた実際に見ていないのでなんとも言えません。
現在使うなら何が良いのかについては別の機会に譲るとして、今回は息子の時にどう進めたかについてのみでお話をさせてください。(いずれ必ずご紹介させていただきます。)
話を戻します。ベースになる本を読めるようになったら、そこから先は得意科目にするための行程になります。ベースになる本ができれば、別の本を読むときにも頭に入りやすくなります。前提知識ができているので知らないことが少なくなって読みやすくなるからです。また、同じ出来事が載っていても違う角度から捉えていたりするので、印象に残りやすくなって知識の定着率が上がります。上級レベルの本を読んだり問題を解いたりすることは、ベースの本を繰り返し読むようなもので、元の本の内容がより深く理解できるようになるところが面白いところです。
気をつけるべきことは、他のものを使って勉強をしたとしても、必ず定期的にベースの本に戻ってくることです。読む回数を重ねていくことで知識は確固たるものになっていきますし、忘れる確率もどんどん減っていきます。もうわかっていると思っていることをさらに読むことが、試験で確実な得点につながるのです。
いきなり本を読むのは大変
ところが、何の知識もない子供に歴史の本を読めと言っても、そのハードルは大人が思う以上に大変です。そういえば私も、必要に迫られて読んだ法律の本は取っ付きが悪かった記憶があります。元の知識が少ないほど、本を読むのは骨が折れるということなのでしょう。好きで読むならまだしも、義務で読まないといけないならなおさらです。
知識が少ないから読みづらい、読んでいて楽しくないのです。だから、少しずつ知っていることを増やしていくことが解決法になります。読んでいくにはある程度の下準備が必要なんです。それにはマンガを読んでおくのも有効な手段。マンガの知識を蓄えておけば、活字を読むのもかなり楽になるでしょう。
時代の名前と特徴を覚える
下準備としての最初の一歩は時代区分を覚えることが良いと考えます。私の小学生の頃は古墳時代を大和時代と呼んでいましたが、それ以外は現在と変わらず実績のある時代区分と言えます。今後も大きな変化はないでしょうから使いやすい時代の分け方です。
時代の名前が変わるのには理由があります。各時代には特徴があって、それが変化するからこそ名前が変わるのです。だから、それらを把握することが流れをつかむことにもつながっていきます。
次の文章は私が作ったその名も「1分歴史」です。その名の通り1分で全時代とその短い特徴を言えるようになっています。
◎日本列島でき、縄文時代。小さなムラできる。
◎稲作伝わり弥生時代。ムラはクニへと発展。
◎大和朝廷、国土統一。権力示す巨大古墳がつくられた古墳時代。
◎仏教が伝わった飛鳥時代は天皇中心国家を目指した。大化の改新を経て、律令体制整う。
◎平城京が完成し奈良時代。仏教が保護され、寺院が力を持った。これを嫌った桓武天皇、平安京に遷都。
◎平安時代には貴族の争い勝ち抜いた藤原氏の摂関政治、続いて院政が行われた。やがて武士が台頭し、平氏が実権にぎる。
◎平氏倒した源氏、本格武家政権の幕府を開き鎌倉時代に。元寇で力が弱まり幕府は滅亡。復活した天皇親政は失敗。
◎足利尊氏、幕府開いて室町時代。応仁の乱で幕府おとろえ、戦国の世に。鉄砲で乱世を抜け出した織田信長、幕府滅ぼす。
◎信長の後を継ぎ、豊臣秀吉が天下を統一した安土桃山時代。さらに天下は徳川家康に。江戸幕府開かれる。
◎天下泰平の江戸時代は黒船来航で動乱の幕末に。大政奉還し幕府終わる。
◎明治時代は、一等国を目指した。近代化を進め、2度の戦争に勝利。大正時代、一次大戦に参戦。列強の仲間入りを果たす。
◎恐慌後、世界は再び戦争に。二次大戦で日本敗北。戦後は復興し経済大国に。そんな激動の昭和時代を経て平成時代。
これは早くなれば1分くらいで読めるようになっています。ゲーム感覚でやるのが良いでしょう。内容についてはここでこだわる必要はないと考えています。極端な話をすれば、時代の順番だけ確実に覚えてもらいたいですね。
時代の順番だけ覚える暗記法もあるので参考までに
縄弥古墳 飛鳥奈良平鎌室町 安土江戸明大昭平
じょうやこふん あすかなら へい かまむろまち あづち えど めいたいしょうへい
時代の順番を覚えたら、時代の大枠がおぼろげながら頭に浮かぶようになりますが、独自の枠を作ってしまう前に、次の時代区分の枠を頭に入れておくことをオススメします。各時代の長さを比較することができるので、感覚をつかみやすくなると思います。
大きくつかむ
次の段階ではもう少し広い範囲でダイジェスト的に大きくつかんでいくようにします。これくらいの範囲でも文章だけではやはり読みづらいので、キーワードを視覚的にとらえられるフィッシュボーンを作りました。フィッシュボーンはマインドマップの一種ですが、マインドマップよりも時代の前後を表現しやすいので歴史では使いました。
実はこのダイジェストを作る過程は絶対に必要なものではありません。フィッシュボーンのようなものはぜひ作ってもらいたいと思いますが、ダイジェストを作るのは結構な手間です。いきなりベース本を読んでも問題ありません。私はベース本を決める前にダイジェストとフィッシュボーンを作っていたのでここに載せました。せっかく作ったので参考にしてもらえれば幸いです。
ここでは奈良時代から平安時代へと移っていくところを例として挙げました。
☆律令制度のゆらぎ
◎公地公民のくずれ
奈良時代、農民は重い税苦しんでいた。口分田を捨てて逃亡するものもおり、荒れる田畑が出てきた。一方では人口増加によって、口分田が足りなくなっていた。口分田不足を補うため、朝廷は開墾を奨励する。723年に三世一身の法、743年には墾田永年私財法と打ち出し、土地の私有を認めることした。貴族や寺社は逃亡農民を労働力として使い,私有地を増やしていった。荘園と呼ばれる私有地の起こりである。結果として開墾地は増えたが、班田収授法はうまくいかなくなり、律令制度はゆらぎ始めた。
◎鎮護国家
奈良時代の初めは朝廷が大きな力を持っていたが,次第に皇族や貴族の間で権力争いが起こるようになっていった。それに加え凶作が続き、疫病が流行するなど社会不安が広がっていた。聖武天皇は仏教の力で国を治めようと考え,大仏や国分寺をつくらせた。このような考えを鎮護国家という。仏教保護政策は寺社の力の拡大につながり、僧である道鏡が政治に影響を持つことにつながった。
☆律令制度の立て直し
◎平安京遷都
増大した仏教勢力の切り離しを図った桓武天皇は、寺社を奈良に残したまま、794年に平安京に都を移した。人心を一新することで、律令制度の改革を行ったのだ。しかし貴族勢力は温存されたため、のちの藤原氏台頭の芽が残された。
この一部分を気に入っていただけなら、全体をダウンロードしてお使いください。ただし、これは10年くらい前に作ったもので、特に手直ししていません。その点はご了承くださいませ。
一問一答を並行して進める
大つかみと同時並行で一問一答問題を進めていきます。大学受験では良い一問一答問題集がありますが、中学受験ではなかなか無いので作る必要があって面倒です。ベース本から語句を選んで作ります。
「律令制度のゆらぎ」からの問題は次のようなものです。(答えは下)
藤原不比等の娘で聖武天皇のきさきとなったのは誰?
本尊は大仏。全国の国分寺の中心「総国分寺」として建てられた寺は?
聖武天皇が目指した、仏教の力で世の中を治めようとする政策は?
社会事業をしながら諸国で布教。大仏造営にも協力した僧は?
上皇の病を治したことから権力を握り、天皇にまでなろうとした怪僧は?
貧窮問答歌を詠んだのは?
723年、開墾地の私有を3代に限り認めた法令は?
743年、墾田の永久私有を認めた法令は?
墾田永年私財法をきっかけに出現した私有地は?
光明子(光明皇后) 東大寺 鎮護国家 行基 道鏡 山上憶良 三世一身法 墾田永年私財法 初期荘園
一問一答だけを進めることは、学習が無味乾燥になりがちで今一つ面白みに欠けます。しかし、語句を覚えることは不可欠であるとともに大事な得点源でもあるので避けて通るわけにはいきません。そこでベース本との併用です。
一問一答を完全にではなくても良いのでとりあえず解きます。そこでベース本を読むと、知っている語句ができている分だけ読みやすくなっているはずです。一問一答各問題は独立していますが、ベース本の中では互いに関連づけて語られていますから、流れの中の語句の位置付けがわかるようになっていきます。そしてまた一問一答に戻ると、これはベース本のあそこら辺に書いてあったな、と考えることができるようになります。この一問一答→ベース本→一問一答→…という循環を繰り返せば、繰り返した分だけ歴史感は強固なものになっていくでしょう。
ベース本を選んだ後の時代の名前と特徴を覚えることも、ある意味一問一答と同じ役割を果たしていると言えます。
まとめ
ベース本を決める
↓
時代の名前を覚える
↓
ベース本を読む
↓
一問一答問題を解く
(大つかみを読む)
↓
ベース本を読む
以下ベース本、一問一答の繰り返し
ある程度自信がついたらもっと難しい本も読むのも良いですし、一問一答以外の問題集や過去問を解くことでアウトプット練習をするのも効果があるでしょう。その際も、必ず定期的にベース本に戻って知識の確認し定着を計ることをオススメします。
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