「夏休みを制する者は受験を制す」 このフレーズは私が受験生だった30年ほど前には既に使われていました。おそらくもっとずっと前からあった言葉でしょう。「制す」は、より過激に「征す」のこともあったかもしれません。
このように、夏休みは受験生にとってたいへん重要な期間ととらえられており、受験の行方を決定づけると考えられています。高3の1学期も終わり、受験に黄色信号が灯り始めた息子にとっても勝負の夏です。
とは言え1学期終了時点では、さほど悲壮感を持つことなく、ある程度余裕があったと言えるでしょう。既に高2の頃から受験に向けたエンジンがかからない状態が続いていたので、やっとここで受験生として気合いを入れてくれるだろうとの期待がありました。ちゃんと勉強に向き合えば大丈夫だろうと息子を信頼していましたし、夏休み前に気が付いてくれて良かったという安心感さえあったほどです。
夏休みに実力が伸びると考えていた根拠は次の通り。
・豊富な勉強時間がある
・本番を見据え集中力が向上する
・弱い科目の実力が急伸する
この辺りは誰もが考えるところではないでしょうか。
しかしながら息子は想定していた内のせいぜい6割くらいの成果しか達成できなかったとのこと。どうしてそうなってしまったのか検討していきます。
インデックス
豊富な勉強時間がある・・・とは限らない
何と言っても、朝から晩までたくさん勉強時間が取れることが夏休み最大の特長です。息子の場合は塾・予備校に通わなかったので、もしかしたら1日17〜18時間できるのかなどと皮算用していたようです。18〜20時間勉強したという受験生の話も時折耳にしますから、それくらい可能かもしれないと。
仮にそこまではいかなくても13〜14時間くらいは確保できると踏んでいました。その根拠は、春休みに夏休みを見越して耐久勉強訓練をやっていて、1日11時間はクリアできていたことです。
暑さを甘くみていた
しかし実際の夏休みの勉強時間は長い日でも1日10時間ほど。6〜8時間くらいの日の方が多くありました。
時間が取れなかった最大の原因は暑さです。特に近年の猛暑は体力を奪います。昔はほとんどなかった気温35℃以上の猛暑日の威力は破格です。息子の高3の夏は十分に猛暑と言えるレベルだったのは残念でした。
南国と言われる高知県出身の私から見ても、東京のような都会の暑さは格別。田舎とは暑さが異質で、頭がクラクラしてきます。外出するだけで一仕事という感覚です。
そのような環境下では食欲も落ちて疲労を感じやすくなります。適度な休息を体調を整えることが大切ですから。だから必然的に睡眠時間を増やすことになりました。これには昼寝も含まれます。したがって、予定していた勉強時間の確保が困難となってしまったという次第です。
ちょっと体力が落ちていたのが災いしました。ここまでにどうせろくに勉強していなかったのだから、せめて走って体力をつけておいた方が良かったようです。もっともこれは一度失敗しないと分かりませんね。
結果的に1日10時間をはるかに下回るような勉強時間となってしまいました。春休みのことを考えるとかなり予想外です。それでも受験生平均から見れば取り立てて勉強時間が少ないとも言えないので、ぜいたくを言っても仕方がありませんが・・・
通塾時間がないという塾なしの利点を最大限に活かすため、まとまった時間を投入して予備校勢に対抗したい気持ちもありました。だから余計に満足度は低くなってしまったようです。ただし全国的にも猛暑だったので、大多数の受験生と比べて不利になったわけではありません。
正念場で集中力が増大する・・・とは限らない
受験が迫るにつれて集中力が増していく人がいます。オンオフのスイッチの切り替えが優れているのか、完全に受験モードに入り切ってそのまま突っ走っていけるような性質の持ち主です。高3夏休み前はそれほどの成績でもなかったのに、秋から受験終盤に一気に逆転して良い大学に入ってしまう。そんな人は私の受験時代にも何人かいました。いつの時代も一定数いることでしょう。
そこまではなくとも、人間、切羽詰まってからの方が力を発揮するものです。夏休みは誰もが認める正念場。普段にはない集中力を出せると考えるのはごく自然なことです。成績が下降線の息子もここでやってくれるだろうと期待していましたし、息子自身もやれるはずと期待していたようです。
ところが、結果はさほど芳しいものではなかったようでした。抜群の集中力で勉強できたということもなく、これまでとさほど変わらない効率しかあげられなかったそうです。(前述した暑さも一因でした。)
考えてみれば、正念場で力が出しきれない人もいます。大事な時期だと思えば思うほど焦ってしまい、平常心を失ってしまう。よくある話ではないでしょうか。息子もどちらかといえばこちら寄りの性質だったようです。
付け加えると、息子は大学の前期試験前の1ヶ月はさすがにそこそこの集中力を発揮していましたから、夏休みはまだ正念場と思えていなかったのかもしれません。
思いの外忙しくて余裕がない
息子の場合は結局塾と予備校には無縁で夏期講習も受講しなかったので、自分のやりたい勉強に集中できるかと思っていました。しかし実際にはそうではなかったようです。
最大の要因は模試の存在です。これが息子の精神的余裕を削ぎました。1学期の駿台全国模試の結果が良くなかったことが大きかったようで、おそらく良い結果が出ないから気が重いという精神的な負担を感じていました。ちょっと気が小さいですがそういう性格ですし、未成年なので仕方ありません。
それなら受けなければいいじゃないかという話ですが、塾・予備校なしの息子にとって、模試は受験生の空気に触れる大切な機会であると同時に、本番へ向けての数少ない練習機会でもあります。受けない選択肢はあまり好ましくありません。
模試は東大模試が2つ(駿台と河合塾)でした。8月前半に行われます。結構な精神的負担だったようですが、この結果が秋〜冬の余裕の一端になるのですからおもしろいものです。
弱い科目の実力が急伸する
夏休みのような長期休暇は弱点にテコ入れする絶好の期間です。ただしこれに関しては、確実に力を伸ばせる分野と伸ばせるのかよくわからない分野とに分かれます。後者だと、夏休み中必死で頑張ったのに実力アップしていない、というストレスを感じてしまいかねません。そのためよく理解しておく必要があります。
実際に伸びる場合
確実に力が付いたという実感が得られるのは、未修分野に手が着けられた場合です。社会科目はもちろん他科目でも、覚えないといけないことを含んだ分野でこれまでにやっていなかったものがあった場合には、覚えれば覚えるほどストレートに点数に反映されてきます。英単語を増やすなどの学習も短期で力が付く典型的な一例です。
これらの事例は、高3夏休み前まで部活をしていた生徒とか、非中高一貫校で先取り学習をしていない高校の生徒にとって当てはまることが多くなります。そのため、そういう生徒にとって夏休みはとりわけ重要な期間となるのです。
実感がわかないことも多い
それに比べて中高一貫校で比較的マジメに勉強に取り組んできた生徒にとっては、夏休みで劇的に成績が上がるということは期待しづらいと言えます。夏休みに入る時点どころか高2の間に全範囲を履修している高校もあります。既に一通りの勉強は終えていて、受験に向けてブラッシュアップをしている段階です。
そういう生徒も各自で、弱点の補強に合った夏期講習や問題集を選んだりして取り組んでいますが、実力の伸び率という点では非中高一貫校の生徒には絶対に及びません。
この辺りの話を理解しておかないと「夏休みで一気に実力をあげてやる」と意気込んでいても、9月になった時に勉強した割に実力がついたかどうか不安だ、ということになりかねません。息子も、成果があったかどうかわからなくてなんだかふわふわした感覚だったと言っていました。
このように、即戦力になるような勉強はできなかったので手応えがイマイチというケースは多いと思います。でもこれは大概において地力の底上げにつながっているので、1〜3ヶ月後に学力の伸びが実感できるようになるはずです。
これは中高一貫校生なら知っておくべきことでした。当時勉強に関しては息子に任せていたので口も出しませんでしたが、夏休みに一気に実力がつけられなかったと悩んでいたようなので、もう少しきちんと話をしておけば良かったと思います。
最後に
「夏を制する者は受験を制す」という割に、さほど制することができなかったものの、最低限はクリアして夏休みを乗り切ったと考えられます。できる範囲内で全力を尽くせたのではないでしょうか。少なくともスランプは乗り越えて、受験生になったと思いました。十分に満足いかな買ったとはいえどもそれなりに充実していたからか、夏休みはあっという間に終わったそうです。
夏休みに最高の結果が出せるに越したことはありません。しかし本番はまだ半年近く先です。まだあわてるような時期ではありません。最低限必要なことをやっておけば大丈夫です。これから夏休みという場合は入れ込みすぎず、うまく過ごせなかったという場合はあまり気にしない。そういう余裕が大事かな、と思いました。
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