例年10月末の土日の2日間、防衛医大の試験が行われます。この試験については情報が少ないので、少しでも受験をお考えのみなさんはつまらない情報でもとにかく欲しいのではないでしょうか(我が家ではそうでした)。少しでもお役に立てればと思い、できる限り覚えていることを絞り出してみます。少なくとも気休め程度にはなると良いのですが・・・
インデックス
- 東大のお試し受験として利用されがち
- 受験手続きは持参がオススメ 2020.9.28追記
- 使用した教材
- 合格基準
- 二次試験のあらまし
- 合格発表
東大のお試し受験として利用されがち
防医受験は実際には志望していないにも関わらず、しばしば受験の予行演習として使われることがあります。とりわけ東大志望者が受験することが多いようです。それには4つの理由があります。
ひとつ目は国公立大前期試験の約四ヶ月前の10月末という適度な時期に一次試験が行われることです。その約1ヶ月後の12月の頭には2次試験が実施されますが、それ以降はセンター試験(2020年から大学入学共通テスト)の準備もしないといけないし年末年始で慌ただしくなるので大変です。ですから10月末というのは絶妙な時期と言えるでしょう。
ふたつ目は受験科目が東大と似ているところです。具体的には記述が課される点で、それも医学部としては珍しく国語の記述もあります。理系でも二次で国語を課される東大を受験しようとする学生にはちょうど良い練習になります。
みっつ目は難易度が東大と近いことです。理Ⅲの合格体験記を見ると、併願校に防医を受けていることが非常に多く、しかも高確率で合格しています。そして理科Ⅰ類Ⅱ類の平均的な合格水準よりも難しいと一般的には認識されています。符号で表すと、理Ⅲ>防医≧理Ⅰ理Ⅱという関係性になっていて、学部を問わず理系東大のお試しとしてちょうど良いのです。
息子の場合
申し込みの時点では東大(理Ⅰ)と国公立医学部のどちらを受験するか決まっていませんでした。(とっくに理Ⅲは別世界の話と割り切っていました。)
父親である私は息子は東大を選ぶものだと思っていました。これまでに息子から医学部受験宣言を聞いたことはなかったからです。ただ東大を受けるならば、防医はちょうど良い練習になると思っていたので受験には賛成でした。中学受験でお試し受験をしなかったことが、トラウマというには大げさですが小さなトゲのように引っかかっていたので、その点からも受けた方が良いだろうと思っていました。
さらに、申し込みの9月に判明した夏休みの東大模試の結果が意外と良かったことも後押しとなりました。それくらい受験しておく余裕はあるかなと思ったからです。
受験手続は持参がオススメ
受験要項の受験手続には、インターネットによる方法と郵送又は持参による方法が記されています。
息子の受験のときにインターネット出願があったかというと無かった気がします。どこの大学の出願も郵送でやっていた記憶しかありません。模試はネット申込をしていましたから、あれば覚えていると思うのです。
ネット出願できたかどうかはともかくとして、我が家での防医出願は郵送ではなく持参を選択しました。全国の自衛隊地方協力本部に直接願書を持っていけば受け付けてくれます。
持参にした理由は2つあります。確実に受験できるようにすることと、自衛隊に接触してみたい願望があったことです。
確実に受験、という点では持参以上に確実なものはありません。その場で受理してくれるのですから手違いがまず起こり得ないからです。10月末〜11月初めに行われる最初の受験で出願にも慣れてません。しかも普段馴染みのない自衛隊ですので勝手が違いすぎます。それでも直接申込みならば、間違いなく受験できるという安心感は代え難いものでした。
自衛隊に接触してみたいという理由も、やはり普段馴染みがないからです。知っていることが増えれば怖くなくなるということもあります。実際私達に対応してくださった職員さんがとても丁寧で感じの良い方々だったので、自衛隊に対する我々の印象はかなり好いものになりました。
当時は地方協力本部が仮住まいの新宿のオフィスビル内でしたが、現在は市ヶ谷の新庁舎に移っているので、自衛隊!!という雰囲気を味わえると思います(市ヶ谷で受験はできません)。余裕があるならお子さん本人が足を運ぶのも良いんじゃないでしょうか? もっとも直前でそんな暇はないかもしれませんが・・・
使用した教材
教学社の過去問、いわゆる赤本のみです。特別に何か対策の問題集等をやったということはありません。
医系英単語はそこまでがんばらなくて良い
医系英単語の参考書をやる方が良いという話もありましたが、過去問をやってみた限りではそこまで手を出すとオーバーワークになると判断してやっていません。ごく基本的な医系単語はネットを検索すれば出てくるので、それを見て単語帳を作ってました。stomachやlungなどの基本的な単語を除けば、せいぜい100語くらいです。
それは決して必須ではなく、やらないよりもちょっとマシという気休め程度の感覚です。防医の英語で医系英単語が合否を分けるということはないと思うので、あまりのめり込みすぎないことです。(もっとも、大学入学後は否応なく大量の医系英単語を覚えることになるので、覚えたものは将来必ず役には立ちます。)
文学史は捨てて良い
国語の択一で文学史的な知識を1問は聞かれます。簡単なこともあれば、案外難問なこともあります。でも択一である以上当たる確率はあります。ひとつくらいは絶対違う選択枝がわかったりするので、3分の1か4分の1で正解は出せるでしょう。
確かにここで確実な正解が取れるなら有利は間違いなしですが、そのためにわざわざ勉強するのはちょっと大変です。文学史も範囲が広いですから、理系であまり時間をかけている余裕はないはずです。これまでに受けてきた国語の授業の記憶と自らの教養を頼みにして、わざわざ勉強するのは無駄と考えます。
そうは言っても不安は尽きないと思うので、息子の受験時に私が作った近代文学のマインドマップをupしておきます。試験直前に眺めていると、もしかすると運良くビンゴするかもしれません。
合格基準
試験の配点等は全くの非公表です。正式な模範解答も出されません。そのためどれくらい取れば合格できるのか皆目分からず、様々な噂が飛び交うこととなります。デマがまことしやかに流されますし、特に一次試験後にはネットやSNSは大賑わいです。
私も当時、時間を割いてネットに張り付いて調べましたが、確固たる結論のようなものはまず見当たりません。それでも噂の最大公約数を拾っていけば、この程度かなという予想は立つこともあります。ここから先は真偽のほどは不明ですが、息子の話も聞きつつの私見を述べたいと思います。
択一試験
択一は一次試験1日目の午前中に行われます。英数15問ずつで30問、国10問の計40問で、この3科目まとめて90分でこなすという珍しい形式です。
息子が友人から聞いた噂でこんなものがありました。「40問中33問的中で合格」というものです。この33問がやや上下するものの、択一のみで決まるという噂はなかなか根強いものがあり、ところどころで見かけます。
しかしこれはありえません。1日目の午後と2日目を使って記述試験を行うのです。それらの試験が意味がないとはとても考えられないからです。択一のみだとまぐれで決まる確率が大きく上がります。防医だって優秀な人材が取りたいでしょうから、まぐれの余地は少ない方が良いに決まっています。
択一のみで決めるなら、1日まるまる使って科目・問題数共に増やした方が選抜試験の信用性は高くなり、実力通りの結果に近づきます。ところが、そうせずに記述試験の方により長い時間を割いているのですから、そちらの配点が高いと考えるのが普通です。
一般的に考えて、択一試験の意味は記述試験の採点をするかどうかの足切りのためでしょう。防衛医大の試験は受験料無料ということもあり、非常に多くの受験生が参戦します。多少幅があるものの約7000人くらいです。一次試験合格発表までの約1ヶ月で、それらすべての記述を採点するのは不可能とは言いませんが大変面倒なので当然足切りしているでしょう。
機械採点なら何千人だろうが大差ありませんが、息子の記憶では択一は機械採点できるマークシートではなかったそうです。今時珍しいので覚えていました。(今はどうかわかりませんが、調べるとどうやら長年この形式のようです)。それだとあまりに採点に時間を食うので、足切りしている可能性はより一層高いと言えます。
択一問題の足切りライン
では何問が足切りラインなのでしょう。そもそも正解数で決めているのでしょうか。択一は英語が簡単で国数とは差があります。国語の中でも上記した文学史のような知識問題と読解問題とでは明らかな差があります。そのため配点が違うと考えるのが自然です。
それに、正解数が足切りを決めているなら、今の時代いくら予備校がデータを隠していても隠しきれないはずです。その噂がないということは配点があるという証拠ではないでしょうか。
ただし、息子から機械式マークシートではなかったと聞いてから、採点員の集計の手間を想像すると、正解数という可能性も捨てきれなくなりました。(それでも、配点はあると思います。)
配点があったとしても具体的な数字は知りようがないので、受験する側は結局正解数で考えるしかありません。だから様々な噂が飛ぶことになるのです。そこでそれらを調べていくと、どうやら20問以下で合格したという話は極端に少なくなるようでした。比較的簡単な英語で稼げる中、3科目40問中半分も正解を出せないというのでは、足切りされても文句の言えないレベルです。
正解数22〜3問だったという声はそこそこあります。それらすべてが嘘とは考えにくいと思っているので、この辺りにボーダーがあると踏んでいます。単純に考えて6割弱の正解数がボーダーとして妥当ではないでしょうか。
正解数6割以上の24問、さらに配点を意識して25問取ればおそらく記述を採点してもらえると思います。だから受験生は6割を目指すのが適当でしょう。
ちなみに、うちの息子は正解数が29あるいは30問でした。前述したように33問合格説もあったので心配していましたが、7割とってダメなはずはないので大丈夫と私は思っていました。
記述試験
記述については、採点基準もなにも不明なので申し上げることも少なく、息子の出来からわかることのみです。
数学は大問1問をまるまる手を着けなかったそうです。物理でも1問穴を開けてしまったみたいです。そう聞くとちょっと大丈夫かと思ってしまいます。
でも試験後に手応えを聞くと結構出来たとのこと。普段からどうだったかを聞いても、あまり芳しい答えを返してこなかったので、着手したところは結構自信があったのでしょう。そこから推察して、一般的な配点なら6割は取れているけれども、7割には届いていないと思われます。ざっくりしていてあまり参考にならず申し訳ありません。
二次試験のあらまし
一次試験合格
今の時代ですから、合否はネットで一番早く知ることが出来ます。便利ですけど何となく味気ないですね。きっと私の年齢のせいでしょうけど・・・。確か予定の時刻よりも早めに発表されたような気がします。無事合格でした。
合格を確認してから30分も立たないうちに、東京地方協力本部の方からお電話をいただきました。これは結構早い方だったようで、数時間後にかかってくることもあるとのこと。地方によっての違いもあるようです。
お電話の内容は、合格したというご報告と、数日後に二次試験の説明会を催すので参加するかどうかの意志確認です。お試し受験の人はここでお断りするのでしょう。その時息子は学校へ行っている時間だったので、帰宅後に本人から返事させることとし、ご連絡先をいただきました。
二次試験説明会
合格発表から二次試験までは2週間くらいですが、その間に二次試験の説明会が行われました。そういうものがあるという予備知識も何もなかったものですから驚きです。ずいぶん親切なことをしてくれるものだと感心しました。全般、防衛省・自衛隊のご対応は親切でした。好感度アップです。
東京会場は十条の陸上自衛隊駐屯地です。
二次試験の概要を教えてくれたり、模擬面接をしてくれました。これまでに面接対策などは全く考えたことが無かったので、大変ありがたかったそうです。
また、他の合格者とコミュニケーションを取れたことも、塾に通っておらず他校の生徒と話すことの少ない息子にとって貴重な機会でした。そこで話をした受験生のひとりはその後同じ大学に通うことになります。
11月末の忙しい時期ではありますが、二次試験を受けるならば参加して損はありません。
二次試験
二次試験受験者は3組に分けられて日時を指定されます。試験会場は所沢の防衛医大です。
小論文
課題文を読んで、要旨をまとめたり意見を述べたりする形式です。わずか800字と少なく、文章を適切に読めることさえ出来れば困ることはないでしょう。小論文としては楽な部類です。どれくらいのウェイトを占めるかわかりませんが、決定的に読み違えるようなことさえなければ差が付くものではないと思われます。おそらく少々読み違えていてさえも、整然とした文章を書けていれば大丈夫ではないかと予想します。
予備校の講座はもちろん、問題集・参考書等の小論文対策はしていません。小学校就学以前から文章を書かせるようにしてきましたから、それが活きました。中高では特に書く練習はしていませんでしたが、書くことへの苦手意識は今に至るまで全くありません。小学校時にたくさん書いておくことはコスパが良く絶対オススメです。
面接
面接官3人に受験生1人形式。事前に面接シートを提出していたはずです。印象に残るような質問もされず、圧迫面接もなく、滞りなく終わったとのこと。拍子抜けするくらいだったそうです。
もっとも息子の場合、面接で有利な事項が2つありました。ひとつは高3で学級委員を務めていたこと。本来なら柄ではなく、実際かなり苦痛でしたが、ここで大いに役に立ちました。
もうひとつ、部活の部長を長く務めていたことも強力な武器になりました。部長といっても、ろくに大会にも出なかったような少人数弱小部活だったんですけれども、そんなことは面接官にはわかりませんからね。
これからはチーム医療が重視されます。そのためコミュニケーション能力が欠かせないと医学部側は見ています(どこの大学もそうでしょう)。そこへいくと息子の2つの肩書きはうってつけで、あとは普通に受け答えできるところを見せれば面接はほぼフリーパスのようなもの。国公立前期の面接でも、あっという間に終わったそうです。
これからの面接対策は、これまでにチームや団体で協力して成し遂げてきたことを、どんな些細なことでも思い出してアピールすることが良いでしょう。医学部志望ならチーム作業で率先してやるようにしておくと、少なからず有利に働きます。ただし、我が強すぎるとマイナスに働くこともあります。バランスが大事です。
あと、面接シートには第一志望の大学を書く欄がありましたが、正直に書いておいて問題ありません。
二次試験の合格率は高い
息子の高校の先生によると「うちの学校から二次試験までいって落ちたことはない」とのことでした。息子の学校は中堅校なので、毎年確実に防医合格者がいるとは限りません。一方、複数合格者が出ることもあります。(ちなみにここで言う合格者とは、補欠というと言い方が悪いですが最終的に連絡が回ってきた合格者のことです。)その程度のサンプル数ですから、その先生の言うことがどれだけ信憑性が高いのかは不明です。実際には二次不合格者はいるようですから、100%正しいわけではありません。しかしながら、二次までいくと合格率がかなり高いことは確かでしょう。
そこから推測すると、二次試験はよほどのやらかしをする、あるいは身体的に不適格だった等の大きな理由がなければ落ちないと考えられます。ですから極度に緊張することは避け、余裕を持って臨むべきです。
合格発表
正規合格と呼ばれる最初の合格者発表は2月の半ばです。一次試験と同じくネット掲示から電話という流れです。この時もお電話はすぐにくださいました。そこでは合格をお伝えしていただいただけで、入学の意志は聞かれません。
この時期は国公立前期に向けての追い込みです。ここで舞い込んできた朗報は、ずいぶんと家族の気分を楽にしてくれました。浪人しないでいいと確定するというのは非常に大きなことです。
国公立合格後
その後無事に前期試験で合格をしました。喜んでいる中でしたが、防衛医大の辞退を迅速にしないといけません。一番早いのは電話することでしょうけれども、本命合格に舞い上がってしまい、あちこちに連絡したりしている内に夜になっていました。そこでその日の内に郵便局から速達で出しました。
内容は、進学する大学名、辞退することへのおわび、試験に関わっていただいたことへの感謝を書くよう助言したのでそんなことを書いたでしょう。その後は何もご連絡をいただいていませんから、無事に伝わったはずです。
追加合格の知らせを待っている受験生はたくさんいますから、辞退の報告はなるべく早くすべきです。しかし、防医か他大学かを迷って結論を出しかねるということは当然あるでしょう。本命校に落ちて浪人するかを考えることもまたあるでしょう。さすがにその場合はギリギリまでとことん悩んだ方がいいんでしょうね。
入学後ほどなく退校する学生も数名いると聞きます。その場合多方面に迷惑をかけることになりますから、それよりはじっくりと悩み抜いた方がいいですね。18〜20歳の若者です。簡単に結論を出せないでしょうし、それを求めるのも多少酷なことです。
息子の場合は、国公立前期がダメなら後期に向かう予定でした。私は後期の大学よりも防医の方がいいのではと言いましたが、自衛隊で働くイメージが湧かず、決意には至りませんでした。結局前期合格により、本格的には悩むことなく終わることになりました。
おまけ 防医の発音
防医は英語のboyと同じように頭の「ボ」のところにアクセントがあると思っていましたし、我が家ではずっとそう言っていました。ところが現在の防医の学生は無アクセントでボーイと言っているそうです(年配の人ならBOØWYの感じといえば分かりやすいかもしれません)。これは防医に進学した息子の友人がそう言っていたそうですから確実な情報です。若者は無アクセントの傾向があるので、ずっと昔からなのかは不明です。
本気で進学したい人は無アクセントで防医と言って、気持ちを高めてはいかがでしょう?
少しでもお役に立てたでしょうか。受験する人は頑張ってください。健闘を祈ります。
コメントをお書きください
ななし (月曜日, 02 11月 2020 00:51)
択一試験は3時間ではなく90分ですよ。
管理人 (月曜日, 02 11月 2020 12:15)
教えてくださりありがとうございます。助かります。