算数の計算は、できる限り筆算をせずに暗算することを強くオススメします。その理由は、筆算はミスしやすく時間がかかることです。このあたりの話について詳しくご説明していきます。
暗算の方が速くてミスが少ない
筆算と暗算の大きな違いは計算スピードです。式を筆算に変形して別の場所(計算用紙や試験用紙の余白)に書き写し、計算をし、出した答えをまた解答欄に書き写す。この時間を想像してみてください。
暗算ならその時間内に計算を終えることが十分に可能です。その上で検算または別の方法による計算ができるでしょう。ここが大きな差となります。筆算1回の間に暗算で2度3度計算できるのですから、ミスは格段に減らすことができるのです。
筆算するとき、きちんと検算できているでしょうか。検算のためにもうひとつ筆算するのでは時間がかかり過ぎるので、そこまでやっている人は少ないんじゃないでしょうか。一例見て見ましょう。
(例)
検算まで行うと最初の式だけで2つの筆算が必要です。これを複数実行すると結構な時間がかかります。この検算のわり算を暗算でやれるなら、元のかけ算も暗算でしておけばいいんじゃないか、ということになります。
筆算は転記ミスが多い
筆算する際の書き写す作業=転記という作業もミスを生んでしまいがちです。
試験というものは時間との戦いでもあります。慎重にやっているつもりでも、急ぐとどうしてもミスは出てしまいます。
そして書き写す手順が多くなればそれだけミスの可能性は増えます。だからこそ筆算は必要最低限にすべきなのです。
また字の汚なさも転記ミスの原因です。限られた時間なので字はどうしても乱れがちです。そうなれば当然読み違えることも出てきます。元々字がうまくなければなおさらでしょう。また、ケタを見間違えることもよくあります。
上記の例を見れば、たくさん筆算をして書き写すとミスが出やすいことが実感できるのではないでしょうか。字もキレイではないのでなおさらです。
どこまで暗算どこから筆算?
筆算は必要最低限にすべきですが、言い換えればどこまで暗算でやるべきか、という話になります。私の考える、ここまでは絶対に暗算でやるべきという範囲を示します。
3ケタまでのたし算・ひき算
37+58、84ー59のような単純な2ケタ同士のたし算・ひき算は筆算してはいけません。ここまでは絶対として、さらに3ケタ同士までは暗算できるように訓練しておきたいところです。
それ以上になれば、どちらを選ぶかは臨機応変に対応していきましょう。例えば4ケタ以上のでも整数同士のたしひきなら暗算で十分にできます。ただ、小数も加わって4ケタ5ケタ以上になれば、念のため筆算してケタをそろえておいた方が良いかもしれません。
2ケタ×1ケタのかけ算
36×7、53×9のような2ケタ×1ケタのかけ算は暗算必須です。これは5.7×6、68×0.4のような小数の混じったかけ算でも同様です。
3ケタ以上×1ケタの場合にどうするかは、2ケタ×1ケタを練習した後、能力に応じて決めれば良いでしょう。
2ケタ×2ケタ以上になるとたし算が複数回絡んでくるため、急に難しくなります。これを訓練しておくことは短期記憶を鍛える意味でも有効ですが、実戦投入するのはよほど手慣れていないと不安です。筆算を丁寧に行うのが無難でしょうね。
割る数が1ケタのわり算
129÷3、1944÷6のような1ケタで割るわり算は暗算すべきです。これは、分数の約分、最小公倍数を求めるときのすだれ算、素因数分解などでも使いますから、幅広く応用できます。
2ケタで割るときでも割られる数が3ケタまでなら暗算で十分いけます。割られる数が4ケタ以上だと筆算も必要になってきます。その場合でもかけ算の暗算ができればかなり計算は楽になります。
暗算のかくれた効能
計算スピードが上がりミスが減る。このすばらしい効果以外に、暗算には間接的に効いてくる効能があります。
暗算をする上では短期的に数字を記憶しておくことが必要となります。この短期記憶する作業が頭に良い作用を及ぼしてくれるのです。数字を映像化して一時的に覚えておくことは、頭の中の作業スペースであるワーキングメモリを広げることにつながるからです。
この映像化の訓練やワーキングメモリの拡張は、長期記憶力や思考力の強化に発展すると私は考えております。暗算をやればそれらが即効で増強されると保証はできませんが、案外高い効果があるのでは?という実感です。
このかくれた効能がどうであれ、暗算には十分に優れた特長があります。効けば儲けものぐらいに考えて、暗算の実利(速度増ミス減)を求めてもらえれば良いと思います。
最後に
以上、筆算はできるだけ避けて暗算をするべき理由を述べてきました。ここで気をつけてもらいたいのは、あくまでも「できるだけ」です。筆算が不要というわけでは決してありません。
そろばんの熟練者でなければ筆算は絶対に必要です。だから学校で教わる筆算は確実にできるようにしておかないといけません。暗算は重要ですが、筆算もまた重要だということです。お間違い無きようお願いいたします。
暗算を実践する上で障害となるのは練習量の少なさです。学校では教えてくれませんし、専門にやってくれる塾もありません。そろばんをやるしかない状況です。
そこで、当HPではKindle向けに教材を提供していきます。徐々にではありますが数を増やしレベルも上げていきますので、ご利用いただければ幸いです。
コメントをお書きください