西海道です。九州の名の由来となった9つの国と壱岐・対馬からなります。
①豊前
現在の福岡県東部と大分県の一部(中津市、宇佐市)です。
中津、宇佐といえば唐揚げが全国的に知名度が上がり、豊前名物として広まっています。とり天も有名ですが、こちらはまだ全国区ではありません。
中津といえば福沢諭吉の出身地としても知られています。
奈良時代の道鏡が天皇位を簒奪しようとして起こった宇佐八幡宮神託事件で知られる宇佐神宮は豊前国の一ノ宮で、全国の八幡様の総本宮です。
北九州市を中心とする豊前北部では豊前うどんが人気上昇中。やわらかい博多うどんよりはシコシコしており、透明感が強い麺が特徴。コシの強い讃岐うどんの勢力が強すぎて全国区になるのは大変ですが、少しずつ食い込んでほしいものです。
②豊後
現在の大分県で、豊前地方(中津市・宇佐市)を除いた部分です。
豊後水道にその名が残っています。その豊後水道で一番狭いところを豊予海峡と言います。豊後の豊と伊予の予で豊予で、佐賀関と佐田岬の間の海峡です。佐賀関で揚がるサバとアジは「関サバ・関アジ」と呼ばれるブランド魚です。
豊後を冠する市町村に豊後高田市と豊後大野市があります。豊後大野市には「東洋のナイアガラ」原尻の滝があります。
③筑前
現在の福岡県中部および西部です。福岡市・博多はここにあります。
筑前と筑後は元々筑紫国という一つの国でした。そのため「筑紫」という名称も多く残っており、その代表が筑紫山地です。筑紫野市(ちくしの)もあります。
福岡県の中央部に筑豊という地域があります。筑前の築と豊前の豊で筑豊。田川市と田川郡が豊前で、それ以外は筑前です。かつての日本最大の炭鉱、筑豊炭田がありました。
筑前の名を冠する全国的な地名度を誇るものに、「筑前煮」がありますが、筑前を中心とする九州地方ではそれを「がめ煮」と呼んでいます。
最も有名な「筑前守」といえば羽柴筑前守、のちの豊臣秀吉です。
④筑後
現在の福岡県南部です。
国府・国分寺・国分尼寺は久留米市にありました。現在の筑後地方の最大都市です。
3大暴れ川は坂東太郎(利根川)・筑紫次郎・四国三郎(吉野川)ですが、その次男格が筑後川です。筑紫次郎はつくしではなく「ちくしじろう」と読みます。筑後川の下流域は筑紫平野が広がります。こちらは「つくしへいや」です。
筑後市がありますが、市内を筑後川は流れていません。市内には筑後船小屋駅という新幹線の駅があります。
⑤肥前
現在の佐賀県と長崎県(壱岐と対馬は除く)です。
肥前国の国府は佐賀市にありました。現在肥前地方での最大都市は長崎市です。
明治維新を推進した雄藩、薩長土肥の肥は肥前藩(佐賀藩)を指します。副島種臣、江藤新平、大隈重信らが肥前藩の出身です。
長崎は江戸幕府の直轄地だったからか、肥前というと佐賀県のイメージが強いと思います。その一例として駅名を見ると「肥前」がついた駅名は全部で14ありますが、そのうち12駅が佐賀県内です。
⑥肥後
現在の熊本県です。
肥前と肥後はかつて肥国(火の国)という一つの国でした。肥前と肥後の間には筑後
があり、一つの国なのに分断しています。筑後には暴れ川で知られる筑紫次郎・筑後川が流れていて、陸路は今の感覚と違って不便でした。海路が主流だったのでしょう。島原と熊本は案外近くです。
手鞠歌「あんたがたどこさ」の歌詞
あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ
があまりにも有名で、肥後=熊本の認知度は高くなっています。
日本三大頑固の一つに「肥後もっこす」があります。他は「津軽じょっぱり」と「土佐いごっそう」です。
⑦日向
現在の宮崎県(鹿児島県志布志市と大崎町を含む)です。
宮崎県東部の海域は日向灘です。
宮崎県北部には日向市があります。
日向夏という柑橘類の名産品がある。果肉とその外側の白皮も一緒に食べるのが特徴。果肉は酸味があり白皮は甘い。高知では小夏の名称で生産されている。
⑧大隅
現在の鹿児島県東部(志布志市と大崎町を除く)です。種子島・屋久島の属する大隅諸島と、奄美群島も含みます。
鹿児島県の東側の半島は大隅半島です。活火山で知られる「桜島」はその名の通り島でしたが、大正時代の大噴火により溶岩が海に流れ込み、大隅半島とつながりました。元々島と半島は狭い海峡が隔てていました。
日本初の人工衛星は「おおすみ」。大隅半島の発射場から「おおすみ」を載せたロケットが打ち上げられました。
⑨薩摩
現在の鹿児島県西部です。
薩摩半島は大隅半島の約55%の面積にもかかわらず、鹿児島といえば薩摩を思い浮かべる人が多いようです。
薩摩といえばサツマイモです。江戸時代に琉球王国(現在の沖縄県)から薩摩に伝わりました。
長州藩と並ぶ幕末・明治維新の主役が薩摩藩でした。薩摩藩はほぼ現在の鹿児島県を領地としていました。治めていた大名は島津氏。明治新政府の柱、維新三傑の西郷隆盛と大久保利通は元薩摩藩士です。
⑩壱岐
現在の長崎県壱岐島です。
壱岐は日本の島の面積ランキングで20位以下で、北海道の奥尻島や瀬戸内海の小豆島よりも小さい島です。五畿七道では最も面積が小さい旧国です。
古事記の国生み神話では、淡路島、四国、隠岐島、九州についで生み出されました。以下は対馬、佐渡島、本州と続きます。
「触(ふれ)」という壱岐独特の集落の表し方があります。壱岐市○○町××触のように表します。
平安時代の牛車に使用されたと伝えられる歴史のある壱岐牛は、現在希少なブランド牛として高く評価されている。
⑪対馬
現在の長崎県対馬です。
九州と朝鮮半島の間の対馬海峡があります。
対馬海流は、東シナ海から対馬海峡を通り日本海へと流れています。暖流のため、対馬の気候は比較的温暖です。
朝鮮半島からも近い国境の島のため、2度の元寇、応永の外寇など度々侵攻を受けました。
ツシマヤマネコは二種しかいない日本の野生ネコのひとつ(もうひとつは沖縄県西表島のイリオモテヤマネコ)。絶滅の危険性があります。
以上、西海道でした。福岡県と大分県がゴチャゴチャしていている以外は憶えやすいと思います。壱岐、対馬とか島が一国は憶えるのも簡単ですね。
※種子島、屋久島が一つの国だったこともありますが、気になる人は調べてみてください。
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次回は東海道です。
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